STさんが関わる『ことばの教室』とは座談会

白石(Ns)

言語聴覚士であるみややんのプロフィールに「”ことばの教室”で少し働いていたことがある」と書かれていたのが気になって、いろいろ聞きたいです!

ことばの教室で働く言語聴覚士とは

白石(Ns)

行政などで開いている教室で、実際にSTさんもいるような場所なんですか?

まず「ことばの教室」とは、言葉の成長がゆっくりで支援が必要なお子さんをサポートする場所のことです。未就学児は市区町村が設置していることばの教室、療育センター、小中学生は各地域の小中学校に設置されている通級があります。毎日ではなく、曜日で開校していて、STが複数の学校を掛け持っていることも多いです。ことばの教室に所属するスタッフは、基本的にはSTです。場合によっては事前に心理士さんによる評価や、行政担当者が窓口対応を行います。

みややん(ST)

白石(Ns)

STさんがメインでみているんですね~!そこでみややんはどんな風に働いていたんですか?

私は民間で運営していることばの教室に勤務をしていました。主に未就学児を対象にしていて、発達障害や脳性麻痺などによりことばの成長がゆっくりなお子さん、ことばにどもり(吃音)のあるお子さん、発音が誤って獲得されているお子さんなど、さまざまなお子さんと関わっていました。

みややん(ST)

白石(Ns)

なるほど~。ことばの教室って、どういう流れで対応するのか気になります!親御さんから直接問い合わせがあるのか、それとも他の施設などから連絡がくるのでしょうか。

私の勤務していた民間のことばの教室も同じく、親御さんが直接電話で問い合わせていただいていました。予定が合うところで来所してもらい、相談、評価、支援をします。すでに問い合わせをしてきてくださる親御さんは、「うちの子は他の子と違う」と思って連絡をくださる方が多いので、STとしてはまず親御さんの心配事やおうちでの状況、幼稚園や小学校での様子をお聞きします。そして、スケジュール変更に対応できないお子さんや、情報を聞いて理解することが難しいようなお子さんには、言葉で伝えるだけではなく、絵やイラストなど見える化したものでの提示を提案します。

みややん(ST)

白石(Ns)

子どもの状態に合わせて工夫しているのですね…!

さらに、親御さんはお子さんの一番の理解者で支援者でもあるので、お子さんのサポートと同じくらい、親御さんのサポートは大切です。吃音は「厳しいしつけの影響」や、ことばの発達がゆっくりなお子さんは「親の語り掛けが少ない」など誤った情報を信じている親御さんもいるので、正しい理解を促していく必要があります。

みややん(ST)

お子さんがことばの教室に通っていた経験

あずまっち(Ns)

うちの子、就学前の約10ヶ月間ほどことばの教室に通っていたことがあります。STさんはいつも息子のペースに合わせながら、優しい言葉で話しかけてくれるので、月に一度の教室をとても楽しみにしているようでした。また、「お母さん焦らなくて良いですよ。少しずつやっていけば、改善してくると思いますから」という言葉にいつも元気をもらっていました。

そうだったのですね。そう言ってもらえると同じ職種として嬉しいです。

みややん(ST)

白石(Ns)

あずまっちさんのお子さんは、どのような経緯で通われていたんですか?

あずまっち(Ns)

息子は、サ行→シャ行、ジュ→ズ、シ→リといった具合ではっきりと発音できないことがありました。ことばの教室では、最初にどの発音が苦手なのか確認テストを受け、正確な発語のためにどのような練習が必要か教えてくれました。当時通っていたところは、就学前児童が対象ということもあり、小学校入学とともに支援は終了。その短期間で劇的な変化があったわけではありませんが、教室が終了してからもSTさんに教えてもらったことを継続し、現在は成長とともに聞き取りにくさはほぼなくなりました。

あずまっちさんのお子さんも教室に通われていたんですね…!実はうちも息子が5歳児健診のとき、言葉について指摘を受けたことがありました。そのときは、妻が育休明けで職場復帰していましたが、健診で指摘をされるまでは家族は気にしていなかったんです。ところが、一度指摘されるとそれ以降は不安になってしまい、いろいろ自分たちなりに調べて発音の練習などをした思い出がありますね。その段階から教室のことをを知っていて、気軽に相談できるのであれば、活用しても良かったと今になって思います。

くー(ME)

最近は共働きのご家庭も多く、時間が割けないこともありますよね。くーちゃんが言うように、指摘されてから不安になってしまったということもうなずけます。「ことばの教室に通うのは特別なこと」ではなく、サポートするところなのだということを、私たちももっと伝えていきたいなと思いました。

みややん(ST)

子どもの言葉の遅れを相談されたら

白石(Ns)

私は小児科で働いていたことがあり、知り合いからも「うちの子、しゃべるのが遅い気がする」「呼びかけても反応が薄かったりする」という相談はけっこうもらうんですよね。そういうときに、2歳くらいであれば個人差があるからな~とは思うけど、むやみにアドバイスできないし、どう答えればいいか悩みます。

あずまっち(Ns)

息子はどちらかというと言葉が出るのが遅く、私は心配でならず、健診のたびに保健師さんに相談していましたが、「まだ小さいのでなんとも言えませんね。様子をみましょう」といつも言われていました。言葉が出始めて安心したのも束の間、はっきり発音できないことが気になり始めたとき、どこに相談すべきか悩みました。保健師さんにまた相談するのか、もし耳の聞こえにくさなどに起因するのなら、耳鼻科に相談した方が良いのかなど、さまざまなことを考えました。

仰るように大まかな発達の目安になる年齢はありますが、とても個人差があります。親御さんからすると「大丈夫だよ」と言われても心配だし、どうすれば良いかわからないですよね。まずはお住まいの市区町村の子育て支援をしてくれる課に、相談してみてはどうでしょうか。または、かかりつけの小児科で相談するのはありだと思います。耳鼻科は、聴覚障害の可能性があれば受診してもいいですが、まずは小児科か地域の療育センター、健診で相談するのがいいでしょうね。

みややん(ST)

やっぱり個人差がありますよね。うちは二番目の子が長男に比べてしゃべりだすのが早かったので「え、もうしゃべるの?」って驚きましたよ。結局、成長していけば無口な兄とおしゃべりな弟といった感じで、もはや個性だなと思うようになりました。かかりつけの小児科に相談するのもありなんですね。それならば受診のハードルは下がる気がします。

くー(ME)

白石(Ns)

なるほど~。こうして聞くと、市区町村の子育て支援課以外にも、かかりつけの小児科や療育センター、健診など相談口はいくつもあるのですね。医療者としてそのことを知りつつ、もし親御さんから相談された場合には、アクセスのお手伝いができるようにしていきたいと思います!

前述したようにお子さんの発達はとても個人差があるので兄弟や姉妹間、幼稚園や保育園の集団生活でも大きく異なります。心配事は増えるかもしれませんが、そのようなときは、ひとりで抱えずに相談相手を探してくださいね。みんなでお子さんをサポートしていく体制を作っていくことはとても大切です。

みややん(ST)

白石(Ns)

みややん、ありがとうございました!