薬剤師のぽりまーです。看護師やリハビリ職だけでなく、薬剤師だって「訪問」をがっつりやっているのをご存じですか? 最近、とあるきっかけで意外と多職種に訪問薬剤師の仕事が知られていないことが発覚し、これは書かねば…! と筆を執りました。今回は、在宅専門薬局で働いている経験を踏まえ、「訪問薬剤師の仕事」についてご紹介したいと思います!
基本的な仕事の流れ
訪問薬剤師は、訪問診療を受けていて薬剤管理が必要とされる患者さんに介入することができます。正式には「訪問薬剤管理指導」と呼ばれ、医療保険(在宅患者訪問薬剤管理指導)と介護保険(居宅療養管理指導)で名称が異なります。基本的に要介護認定を受けている高齢者では、「居宅療養管理指導」のほうを算定することになります。なお、薬剤師界隈ではこれらの訪問業務を「在宅」とまとめて呼んでいることが多いです。
在宅での服薬指導を実施するためには医師の指示が必要です。薬剤師の勝手な判断で家まで薬を届けたとしても、それは算定対象にはなりません。具体的には、訪問診療医による処方箋の備考欄などに訪問指示の記載と、「訪問薬剤管理指導指示書・情報提供書」が必要ですが、緊急の対応が必要な場合などは、口頭や電話などで医師からの指示を確認できていれば、書面は後からでも訪問薬剤管理指導を行うことができます。
仕事のメインは当然ながら「薬剤管理」なので、訪問看護や訪問リハの視点とはもしかしたら少し違うかもしれません。でも、私は薬剤師ならではの「ケア」もあると思っています。ちなみに、小児~高齢者まで幅広く対応できますよ!
実際に患者さんの家で何してる?
私は、まずご自宅にあがって挨拶する時に「今日はどんな感じかな?」と気にするようにしています。ファーストタッチだけでも、得られる情報量は外来と段違いですよね。
薬はすぐ渡せる状態に整理して持っていきますが、中にはその場でしかできないこともあり、私はたいてい以下のような流れで配薬しています。一度にセットする薬は次の訪問予定日まで足りるように&少し余裕を持てるように数を調整しています。
・残薬(飲みそびれ)の確認、回収
・カレンダーやBOXに薬をセット
・頓服薬や外用薬の残数チェック
私が勤務している薬局では、基本的に分包紙に日付を入れているので、残っている薬を見ればその期間の服薬状況がひと目でわかります。必要に応じて飲めなかった理由を確認するなど、アドヒアランス上の問題を解決に導くのも大事な役割です。
また、配薬した後の記録(薬歴)作成や申し送りも重要です。特に私は週1回勤務なので、伝達漏れがあるとスタッフにも患者さんにも迷惑がかかります。疑義照会や服薬情報提供書の作成などが必要な場面もあり、その日のうちにならなきゃいけないことをいつも必死に終わらせています(笑)。
仕事のやりがいを教えて!
在宅医療の利点は、なんといっても①患者さんの生活のありのままを見れること、②定期訪問により体調変化に気付きやすいことですよね。「家にいたい」という患者さんの気持ちを職能的にも人間的にもサポートできたら素敵だなぁと思います。
配薬しながら少しずつ患者さんの近況などを聞いて、アセスメントを深めるべき場面があれば仕事スイッチを入れますし、特に問題なさそうであればほぼ世間話で終わることもあります。でも、それが心地良いんですよね。
時には訪問時間が被った看護師・理学療法士と出会うこともあり、薬剤師が来れなかった間にあった出来事を教えてもらったり(薬剤師の訪問は基本的に週1回、月4回まで)、時間に余裕がある時は処置を見せてもらったりして、これもまた在宅現場ならではの経験だと思います。
私は自己アピールが下手で、訪問時はつい「〇〇薬局です、こんにちはー!」みたいな感じで挨拶してしまうのですが、何回もお会いしてると患者さんのほうから名前を再確認してくれて(本当は自分からしっかり伝えるべきなのは重々承知なのですが…)、次会った時はしっかり名前を呼んでくれたり、ニュースで同じ苗字の人が事故に巻き込まれた報道があると心配してくれたり、本来はケアする側であるはずの自分が、気付いたらめちゃくちゃ患者さんに癒されている場面が多々あります。
まとめ
私はしばらく臨床現場から離れていた時期があったのですが、こういった出来事から改めて「自分はこっち側にいたい人間なのだな」と再認識できたのでした。もうすぐ、施設在宅をメインに扱う薬局に転職予定です。このコラムを読んでくださった方にも、在宅現場で働く良さが伝わっていますように!
調剤薬局時代に研修認定薬剤師を取得し、現在の本職は編集者。糖尿病クリニック、在宅専門薬局で週1回ずつ薬剤師をやっている。臨床現場のリアルな声を届けられる編集を目指している。
Twitter:@care_nekko