日々残薬と闘う薬剤師たち

最近、現場にフルタイム復帰した薬剤師のぽりまーです。久々に一包化や粉砕の調剤をやって懐かしさが溢れておりますが、そこそこブランクがあった割に意外と忘れてなくて安堵してます!

今回は復帰記念に(?)、薬剤師をはじめとする医療従事者が日々対処している「残薬調整」についてご紹介したいと思います! 言葉で表すのは簡単でも、そこには見えざる苦労が…!?

薬を余さず飲むのは薬剤師でも難しい

「こんなにたくさんの薬、飲むの大変だろうな…」「家でちゃんと管理できてるのかな…?」と思うような重たい処方、内科系をそれなりに受けている薬局ではどこでも出くわします。でも、患者さんが一度持ち帰った薬を薬剤師が確認できる場面はそう多くありません。

なので、患者さんの言葉を一旦は信じるしかないのですが、在宅訪問などで実際の患者宅を見た経験から言わせてもらうと、どんなに患者さんから「ちゃんと飲めています」と言われても、《薬は余るもの》と思っておいたほうがよさそうです。薬剤師のアドヒアランス(服薬遵守)が悪いこともしかり…笑

なぜ薬は余るのか

薬が余る理由として、もちろん単純な飲み忘れもありますが、アドヒアランスがそれなりに良好な場合、飲み忘れだけで両手に乗り切らないほどの薬が余ることはないでしょう。それでも余るのは、処方日数より早い受診で生じた重複分や、薬の切り替えにより残った薬など。これらは調整しない限り永久に減ることはないので、繰り返されると立派な「残薬」となるわけです。

その都度で重複分を減らしたり、前の薬を飲み切ってから切り替えてもらったりと適切な調整を挟めば良いのですが、忙しい医療現場でそれを全患者さんに徹底するのは難しい場面もあります。そこで、薬剤師の出番!

患者さんに「きちんと飲んでいても計算上でこれくらい余るので、次回先生に伝えて調整してもらってくださいね」と声を掛けたり、自主的な働きかけが難しそうな場合は「残りの数をお薬手帳に書いてきてくれたら、こちらで減らすこともできます」などと伝えて疑義照会で対応しています。

薬も貴重な医療資源。未開封であれば1~2年使えるものが多いので、残薬を活用したほうが患者さんの自己負担も減るし、医療費も削減できて良い事づくめ。残薬調整も、薬剤師にとって大事な役割の1つなんです。

さまざまな状態で持ち込まれる残薬…

ひと言に「残薬」と言っても、その状態はさまざま。薬局では輪ゴムでまとめた薬を用法ごとに薬袋で分けて渡すのですが、そのままの状態で自宅保管している患者さんは恐らく少数派です。

渡したままの状態で保管されていたら簡単に数えられるのですが、患者さんによってはオリジナルの管理方法をあみ出していることもしばしば。今は100円均一などで一日ごとに薬を分けられるお薬ケースやカレンダーが買えることもあり、シートを1錠ずつ切ってしまう高齢者が多いのは悩みの種です。管理しきれず持って来られた時には、薬がごちゃごちゃに混ざっていて、まずは仕分けから…なんて状態のことも。

このように、残薬確認は薬の数を種類ごとに確かめるところから始まるのですが、単純な数だけだとその薬が何日分なのかわかりません。適切に日数調節するためには1日量と服用回数の把握が必要で、自分の薬局から渡した薬ならすぐに確認できますが、時には別の医療機関から渡された薬を持ち込まれることもあり、こういう時にお薬手帳や薬剤情報提供書があると本当に助かるのです。もしなければ、薬を渡した薬局や処方した医療機関に問い合わせることになるので、対応にはそれなりの時間がかかってしまいます。

例えば…薬が53錠あった場合

  • 1日1回の薬なら…53日分
  • 1日2回の薬なら…26日分と端数1錠
  • 1日3回の薬なら…17日分と端数2錠
  • 1日4回の薬なら…13日分と端数1錠

残薬調整の点数は唯一処方箋がなくても取れる!

あまりにも大量の残薬が持ち込まれた場合、患者さんや家族、介護者の負担を軽減するため、以後の一包化を勧めることが多いです。実は薬局では、基本的に処方箋がないと保険調剤の各算定が取れないのですが、こういったケースで条件を満たしている場合は、(処方箋があってもなくても)月1回に限り処方医に照会の上で「外来服薬支援料1:185点」を算定することができます。

また、単純な日数調節でも「重複投薬・相互作用等防止加算(残薬調整に係るものの場合:30点)」を算定可能です。その業務の手間に対して大きな点数ではないですが、医薬品の適正使用を推進するための業務にきちんと報酬が認められているというのは大事なことですよね。こういったことも、薬剤師としての自覚ややりがいにつながるのです!

まとめ

患者さんは、どうしても「薬が残っている=よくないこと」と思い込みがちですが、近年は医療者が積極的に日数調整に取り組んできたおかげで、だいぶ心理的なハードルが低くなった印象です。薬を残して怒る医療者も昔と比べたらかなり減りました。

余っている薬は使わないと無駄になってしまうので、もし患者さんとの会話中や在宅現場などで残薬の存在を知ったら、ぜひ薬剤師までご一報くださいね!

執筆者
ぽりまー(薬剤師)

調剤薬局で3年間働いてから異業種に転職し、医療メディアの編集者を経て最近現場にフル復帰。臨床現場のリアルな声を届けられる編集を目指している。

Twitter:@care_nekko