令和だって感じる「虎に翼」な世界

2024年4月から、NHK朝の連続ドラマ小説は『虎に翼』になりました。数年前から朝ドラを見る習慣がある私(録画もする)。これまでも良い朝ドラはたくさんありましたが、伊藤沙莉ちゃん演じる寅子は、本当に毎朝元気をくれます。ハツラツとした表情、元気な声は朝に活力をくれると同時に、いつの時代も、「仕事」「結婚」「子育て」は、“そうじゃない人”に悶々とした気持ちを与えるものなのだ、とも思わせてくれます。

「独身女性」は、仕事を引き受けなくてはいけないのか

現在私は、数年前に購入した2LDKのマンションに一人で悠々と住んでいます。決して大きくはないですが、住む場所に対してお金を払わなければならないなら、買ってしまえ!と決めました。人生の中でも大きな決断だったと思いますが「払えなくなったら売れば良いか」そんな気持ちも持っています。

30代も半ばになれば、結婚、出産、離婚を経験している友人もいます。私はこれを何一つ経験していませんが、じゃあ「自分の時間が潤沢にあるのか」と言われると、素直に頷くことはできません。20代の頃から職能団体の活動をずっと行ってきて、全国会議なんかにも出席をしてきているからです。もちろんこれらの多くは、自分がやりたくて、周りに薦めていただいて、やってきた仕事です。

でも中には、「帰ってもひとりでしょ?」そのひと言で回された仕事もありました。「え?だから?」と言い返せば良いと思われるでしょうが、そう思えるようになったのも、ここ数年。そうやって言われる後輩を守れるようになったのもここ数年。

患者さんにさえ、「あなたは独身だから生産性がない、なんて言われる日が来ちゃうかもよ?」と言われたことがあります。こういう場合、「もう言ってるじゃないですか」と笑って返すのが良いのか、怒れば良いのか、黙ってスルーすれば良いのか……。そんなことを一瞬考えましたが、飛沫を防ぐために着けたゴーグルの下で、涙が溢れるのが先でした。

日頃は元気な私でも、ホルモンの調子次第でこういう日だってあります。ひとまずは「あぁ、ホルモンのせいだ」と思いつつですが、今やっているのは私だから頼んでもらえた仕事がほとんどなのですよ。心ないことを言われても、「え、あなたにできるの?できないでしょ?」なんて、鼻で笑っちゃったりして。

「熱心なあなたに見てもらいたい」と、他国籍のママさんに言われた話

10年くらい前の話になるかもしれませんが、小児リハビリに関わっている友達からこんなことがあった、と聞きました。「子どものいないあなたに、私の気持ちがわかりますか?」と、母親に激昂されたと。想像はできるんです、そんな風に言われることがあるって。たしかに、看病する中でそう感じることもあると思います。とはいえ、誰の気持ちだってなかなかわからないのですよね、なんてひと言で片付けたくもなくて。

私も社会的な立場は、当時の彼女と同じです。でもありがたいことに、そのようなお話を一度もされたことがありません。どこかで「いつか言われちゃうかもしれない」と、ヒヤヒヤとしている自分がいたこともありますが、今はいなくなりました。

それは、自分を尊重してくれた中国人のママさんがいたからです。「みややん先生は独身ですよね。それはありがたいです。きっと仕事に一生懸命になってくれるし、誰とも比べずにウチの子を見てくれる」と言ってくれました。

「定型発達」という言葉がありますが、いわゆる健常者の子どもでも教科書通りにはいかないことだってあります。お父さんとお母さんはお子さんをまっすぐ見て、間違ったことをしていなくても、「大丈夫だろうか」と不安になることも多いはずです。どうしても私たちは、「何か伝えなくちゃ」と思って余計なことを言ってしまいがちですが、お子さんの可愛くて素敵なところを、「お、これ好きなの?イイね」とか「頑張ってるもんね」とか、汲み取って言葉として伝えてあげることから始めれば良いかもしれません。

子どもの成長に負けるな、セラピスト

私は後輩たちから転職の相談をよく受けます。最近は訪問リハビリで小児に携わる後輩も増えてきました。

私も転職して、0才児の摂食嚥下から始まり、幼児期の摂食嚥下と言語発達、学齢期の言語発達…と多くの子どもに関わって、頭がぐるぐるしています。子どもは、日々多くの刺激を受けて成長していきます。国家試験を受けるために勉強した知識ではとても足りません。というか、もはや分野が全然違うイメージ。

訓練法の教科書や、事例紹介をしている教科書はたくさんあるので、新たに勉強し直してくださいね。「子どもは小さい大人」ではありません。自分に子どもがいるとかいないとか、そんなの関係なくコツコツやるのです。そういう私も、まだまだわからないことだらけ。毎日が勉強です。

みんなそれぞれのペースがあるはず

趣味があるとか、特技があるとか。時間の使い方、モノの捉え方もひとそれぞれ。何が良いとか、どれが劣っているなんてことは、一概に決められない。

残念ながら時間や年齢は取り戻すことができないし、体は少しずつ衰える。けれど、軌道修正はいつだってできる。その時々で決めていけば良いし、苦しい時はそっと誰かのせいにしたって良いのではないでしょうか。

ここまでやって来れたんだから、きっと大丈夫。自分にも日々言い聞かせています。

執筆者
みややん(ST)

現在は、小児から看取りまでに携わる訪問ST。回復期リハ病院、教員、急性期、ことばの教室もチラッと勤務。摂食嚥下認定STだけど、やっぱりコミュニケーションって1番根っこだよねーと思い返しているところ。

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