2025年を目途に地域包括ケアシステムを構築することが望まれています。誰もが過ごしやすく、切れ目のない医療や介護を受けられるまちを作るためには、一人ひとりが自分事として問題を捉え、地域の中で役割を果たしていく必要があります。さて、今回は大学病院で働く作業療法士が、地域の中でどんなことを考え、役割を果たしているのかを考えてみました。
地域における大学病院(私の職場)の役割は?
大学病院の役割は臨床、教育、研究の3本柱で成り立っています。地域における先進医療を提供することはもちろんのこと、地域の医療・介護職への啓蒙活動や最新の知見を生みだすための研究に取り組むことも重要な使命です。
ただし、医療介護連携を円滑に進めるうえでは、信頼できる関係づくりが最も重要になります。地域の中で最も求められていることは、市民の命を救い、より良い生活が送れるようリハビリテーションを提供し、再発予防を徹底するための適切なアドバイスができることです。こうして一人ひとりに良質な医療を提供することの積み重ねが、地域の中で信頼される近道になると思います。
地域の中で誰と関わっている?
入院および外来リハビリでは、手の怪我をされた方、脳卒中や神経難病をお持ちの方とその家族に直接かかわっています。施設間の連携で言えば、近隣の回復期リハビリ病棟や療養病床を持つ病院、あるいは介護保険領域の通所サービスや訪問サービスの事業所と関わっています。
また、リハビリ専門職宛てに「地域リハビリテーション活動支援事業」という介護予防教室の依頼が来るので、圏域ごとの介護予防教室に出向いて講演や体操指導などを行っています。
さらに私の地域では「ケアマネジメント支援会議」と呼ばれる地域のケアマネジャーたちが困っているケースを持ち寄り、専門職から助言を行う会議があります。この会議では、行政職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のほか、地域の歯科衛生士や薬剤師、管理栄養士、社会福祉士など多くの職種と関わることになります。つまり、私は大学病院の作業療法士でありながら、実に多くの職種を通して地域づくりに貢献していることに気が付きます。
地域の中で作業療法士(私)に何ができる?
私の所属する病院は、地域の中で急性期として位置付けられています。初めての大病を患って入院される方も多くいるため、私は患者さんにとっての初めての案内人という気持ちで接しています。というのは、初めてリハビリが必要な身体になったことで、多くの方は落ち込みますし、これからの生活をどう送ればよいか想像もつかないことがあります。作業療法士は人生や生活をより良くするための支援を行うプロフェッショナルですが、私が関わる時間は患者さんの今後の人生にとってほんのわずかであり、ここで完結することはないのです。しかし、この始めの数日は今後の人生を左右する大きな分岐点であると思います。
そこで、私は患者さんの今後の人生を豊かにするために、どんな医療や介護を受け、自宅でどんな生活を送ることができるのかをイメージしながら話し合うことで、今後の人生の見通しを立てています。微力ではありますが、日々の臨床の中でもこうした意識づけを持つことで、地域に貢献できるのではないかと考えています。
地方の急性期病院で、地域の人たちを陰ながら支えています。真っ当に研究業績を積みながらも、メディアや地域活動を通して作業療法の魅力を伝えるマルチプレイヤー。