家族が脳卒中で片麻痺になってしまった!
こんな時、着替えや入浴の手伝いをしようにも初めはどうしたらいいかわかりませんよね?
今回は生活支援の専門家の作業療法士が、片麻痺の方の上着の着方について解説します。
上着の種類で着方が違う?
上着の種類はいくつもありますが、大きくは「かぶり着」と「開き着」の2種類に分けられます。
かぶり着とは、トレーナーやTシャツのように頭を通す襟首があるタイプの衣服のことを言います。
開き着とは、ワイシャツやコートのように衣服の前側にファスナーやボタンが付いており、前側が開いているタイプの衣服を言います。
この2種類で、大きく着方が異なります。
健常者は着方に多数のバリエーションがある
かぶり着を着る時を想像してください。
最初に頭から通す人もいれば、右手と左手を通して最後に頭を通す人もいるかもしれません。
開き着の場合は、
- 片方の手を通して衣服を背中に回して反対の手を通す方法
- はじめに背中に羽織るようにかけてから両手を通す方法
があります。
健常者の場合、どの方法であっても自由に着ることができます。
着る時は「動きにくい方から通す」
片麻痺の人が衣服を着る場合の大原則は「動きにくい方から通す」ことです。
例えば右片麻痺(右上肢に麻痺症状がある)場合は、右手から衣服を着ることになります。これはかぶり着と開き着で共通しています。
衣服の右袖口から右手を出すことができたら、袖を辿り、肩まで衣服を通してあげましょう。
手首までしか通っていないと、襟口の部分に頭を通すのに窮屈であったり、頭を通している最中に手に通した袖が抜けてしまうことがあります。肘の先まで通すことがポイントです。
動きにくい方から通す理由
これは実際にやってみるとわかりますが、先に通す方の手と、後から通す方の手の動かす範囲をみてください。
先に通す方の手はほとんど動かさなくてももう片方の手が使えれば通すことができます。
しかし、後から通す方の手はどうでしょうか?
開き着だと、後から袖に通す方は、同じ側の肩の上くらいまで手が上がらないといけませんよね。あるいは背中の後ろくらいまで手を回すことが必要なはずです。
つまり、後から通す方が難しいために、動きにくい方から着るように進めています。
衣服が着られない原因は麻痺だけではない?
実は脳卒中の症状にある高次脳機能障害が原因になることがあります。
高次脳機能障害とは、脳の損傷によって起こる認知、判断、記憶、思考などに生じる問題のことで、麻痺のように傍目からはわからないので「見えない障害」と言われます。
例えば、衣服の形が捉えられずに袖がどこかわからなくなったり、袖を通したら頭を襟首から出すという簡単な手順に混乱したりすることがあります。
衣服に目印をつけたり、正しい手順の動画をみながら行うことで解決する場合もありますが、麻痺だけの問題ではないことを考慮し、衣服が着られないことで本人を過度に叱ったりせず、主治医や担当のセラピストに相談してください。
地方の急性期病院で、地域の人たちを陰ながら支えています。真っ当に研究業績を積みながらも、メディアや地域活動を通して作業療法の魅力を伝えるマルチプレイヤー。