医療者に求められるプレゼンスキルはどうやって鍛えるのか

臨床現場で働く医療者に、プレゼンテーション(プレゼン)の機会はどのくらいあるのでしょうか。職種や勤務先によってもさまざまですが、意外と“ある”と思いませんか?

今回は、医療者とプレゼンについて、4職種が集まって話し合ってみました。鍛えられたプレゼンスキルは、思いがけないところで役に立つかもしれません。

 REN(PT)

理学療法士11年目。整形外科クリニック勤務。Webエンジニアとしても活動。

 

 あみ(Ns)

助産師6年目。総合周産期母子医療センターで5年経験後、現在は総合病院の産科に勤務。主に分娩介助や両親学級などの業務を行っている。

 

 S.O(Ph)

薬剤師7年目。後発医薬品企業勤務3年、病院勤務4年。勤務中の病院は、地域住民向けの講演会・研修会を定期的に実施している。

 

 さぼ(ME)

臨床工学技士5年目。透析クリニック勤務。学会発表を積極的に行っており、昨年は2演題を発表。

医療者のプレゼン機会は意外と多い

REN(PT)

今回は、医療者とプレゼンについてをテーマに話しましょう。皆さんの職場でプレゼンをする機会はありますか?
僕は結構多いです。院内では研修や医局会などで、院外では地域の方向けの講演会・研修会などで機会があります。

S.O(Ph)

僕も多いですね。院内では勉強会や医療機器の新規導入時の操作方法などを説明するとき、院外では学会発表のときですね。

さぼ(ME)

私もあります。患者さんに対して新しい試みを提案するときに、医師や上司(師長以上)を相手にプレゼンをすることがあります。あと、症例検討会もあります。

あみ(Ns)

REN(PT)

院内での研修会や症例検討会など、プレゼン機会が結構あるんですね。僕のところでも、月1回症例検討会があり、そこでプレゼンをする機会があります。それにしても、あみさんの医師や上司へのプレゼンって緊張しそう…今までどんな試みをプレゼンしたのですか?
たとえば、新たに「助産師外来(助産師による妊婦検診)」を始める試みについてをプレゼンしたことがあります。

あみ(Ns)

そのような提案を自分からできる職場というのはいいですね。

S.O(Ph)

実は日常業務のなかでもやっているプレゼン

REN(PT)

やはり、医療者にはプレゼンスキルが必要ですね。
そう思います。医療現場は、社会における1組織として動いてる部分も多いので、他部署や経営層に対して折衝するためにも求められるスキルだと思います。もちろん、皆さんが言っていたように講演会などもあるので、一般の方に伝えるためにも必要ですよね。

S.O(Ph)

すべての社会人において、プレゼンスキルが求められる気がしますね。

さぼ(ME)

REN(PT)

社会で働く以上は、プレゼン機会を回避できないということかもしれませんね。
うんうん!

あみ(Ns)

REN(PT)

そもそもプレゼンって、「相手にアイデアを提示して理解を得る」ための1つの方法じゃないですか。僕はリハビリで「患者さんにこういう運動をやってほしい」と思ったとき、“いかにそれを理解し・納得し・行動に移してもらうのか”を考えています。それってある意味プレゼンの延長なのかもしれないですね。
なるほど、患者さんと関わる医療者ならではの発想ですね。他職種でも、そのような“プレゼンの延長”はさまざまな場面で行われていそうですね。

さぼ(ME)

患者さんに対してはもちろん、上司や同僚に対しても、お互いの理解を促すコミュニケーションは、プレゼンの延長と言えるのかもしれませんね!

あみ(Ns)

クオリティは“聞き手”への意識で変わる!

REN(PT)

僕は、普段患者さんに説明する際に患者さんとその家族に説明するくらいなので、不特定多数を相手にするプレゼンは慣れないんですよね。それが僕の苦手意識なのかもしれません。
僕の場合、企業で働いていた時代に大勢の前でしゃべる機会が多かったので、慣れたのだと思います。場数を踏める環境かどうかというのは大きいかもしれません。

S.O(Ph)

REN(PT)

そういう経験は強みですね。臨床経験しかない医療者の場合、プレゼンスキルってどうしたら上達すると思いますか?
私は、プレゼンをよくする友達に「プレゼンってどうしたら上手にできる?」と聞いたら、「まずは伝える対象を絞ること!」と言われました。

あみ(Ns)

REN(PT)

ほうほう!
相手が同職種なのか他職種なのか、はたまた一般の人なのか、などというように、プレゼン先の相手を把握することが必要なのだと思いました。

あみ(Ns)

僕もプレゼンをする際は、“どういう表現や言葉の言い回しをしたら聞き手にうまく伝わるだろう?”と考え、対象を意識して言葉を選んでいます。

さぼ(ME)

REN(PT)

ほうほう!
例えば、看護師向けの医療機器の勉強会なのに、CEの専門用語を連発してしまい、プレゼン終了後に「全然わからなかった」と言われたという話はよく聞きます。僕はこれまで、学会発表や院内の勉強会などをやって場数を踏みましたが、プレゼンスキルを上達させるには、結局さまざまな「人前で話す経験」を積むことが1番かなと思っています。

さぼ(ME)

REN(PT)

なるほど。聞き手を意識すること慣れと経験なんでしょうね。

プレゼンの肝はコミュニケーション

REN(PT)

僕のように人前で話すことに抵抗がある医療者は少なくないと思います。皆さんが人前で話す際、工夫していることや注意していることを教えてください
僕は、プレゼン中に手元のスライドを見ないようにしてます。あとは、目線ですね。会場全体に1回は目線を配るように注意しています。

S.O(Ph)

それは僕も同じですね。話しながら会場に目線を送ることと、原稿は暗記するまで練習するように心がけています。僕の場合、結局原稿は見ちゃうのですが(笑)。

さぼ(ME)

REN(PT)

目線…意識したことなかった(汗)。
プレゼンもコミュニケーションの一つなので、双方向性があるといいですよね。学会発表では、話している間、聴衆からの視線やうなづきの反応は確認するようにしています。また、両親学級など大勢の人の前で話すときは、皆さんと同じように会場全体を見ながら話をしています。学生時代の授業では、一方的に話をされるより、時々質問とかを先生から振ってくれるほうが、興味を持って話を聞けましたよね!

あみ(Ns)

REN(PT)

わかります! プレゼンに聞き入ってしまうときって、相手との一体感があるんですよね。
そうなんです! 私たちも、プレゼンがひとり言にならないよう注意していきたいですね。

あみ(Ns)

いいプレゼンはデキる人から盗め!

皆さん、プレゼンのスキルアップに向けた勉強って何をしていますか?

S.O(Ph)

私も、あまり勉強をしたことがないので、例えばどんな本を読んだらいいのか知りたいです!

あみ(Ns)

REN(PT)

僕は自分でWebデザインを勉強しているので、それがプレゼンのスライド作りにも役に立っています。例えば、 この本は余白の取り方や配色などについて、とても参考になると思います。

  • 書籍:『デザイン入門教室』
プレゼン資料のデザインは、目を引くためにもかなり重要ですよね。なので“スライド力”を付けるといいと思っています。僕がおすすめするのはこちらの本です。

  • 書籍:『シンプルプレゼン 』
  • 書籍:『インセンティブプレゼンテーション 』

さぼ(ME)

「シンプルプレゼン」は僕も持っています!

S.O(Ph)

DVD付きで、いいですよね! ところで、プレゼンのセミナーとかに参加したことがある人はいますか?

さぼ(ME)

REN(PT)

僕はないですね。S.Oさん、あみさんは?
プレゼン自体のセミナーには行ったことないですが、プレゼンがうまいと言われている先生のセミナーを聞きに行ったことはあります。

S.O(Ph)

私も、ベテラン医師はプレゼンが上手な方が多いので、そういった先生のプレゼンを見て勉強してます。

あみ(Ns)

REN(PT)

なるほど! ありがとうございます。自分の周りにいる人のスキルにも着目していくことで、一歩進めそうな気がしました。
まとめ

今回は、医療者のプレゼン機会やスキルの必要性などについて話し合いました。職種が違っても、共通点がたくさんあることや、プレゼンとコミュニケーションのつながりなど、興味深い発見がありましたね。皆さんも、普段の患者さんとのコミュニケーションのなかで、“プレゼンの延長”について考えてみてはいかがでしょうか。自分から積極的に動いて、プレゼンスキルを鍛えていきたいですね。頑張りましょう!