自分を助けてくれる道具のことを「自助具」と言います。
誰かの手を借りるのではなく、自分の手で自分を助けることができる道具のことで、自立の一歩になることも少なくありません。
今回は更衣を助ける自助具について、病院で働く作業療法士が紹介します。
ボタンのつけ外しが簡単になる「ボタンエイド」
手指の細かい動きが難しくなると、ボタン付きのシャツなどが着ることが難しくなり、ストレッチ素材の洋服を選ぶことが増えてしまいます。しかし、「昔のようにシャツを着たい」「好きな服を自分で選びたい」と考える方も多くいます。
このような時に役立つのが「ボタンエイド」です。ボタンエイドは、棒状の持ち手の先にひょうたん型の針金がついた道具です。針金部分を衣服のボタン穴に通し、ボタンを針金にかけて引っ張るだけで、ボタンを付けることができます。
持ち手を握ることができれば使用できるので、指先が細かく動かない人には役立つ道具です。ボタン付きのシャツでビシッと決めたい時は、ボタンエイドを使ってみてください。
足に手が届かなくても履ける「ソックスエイド」
靴はくつべらで履くことができますが、意外にも靴下を履くことは難しいものです。片足立ちで履くことの難しさはもちろんですが、座って履こうとしても手が届かない方もいるのではないでしょうか。
このような時、「ソックスエイド」がお勧めです。ソックスエイドは、イチゴのような形に切った型紙に長い紐がついています。
型紙を半円状に折りながら靴下を通すことで、靴下の挿入口が丸く開いた状態になるため、足を通しやすくなっています。足が入ったら、紐の部分をゆっくりと引いていき、靴下が踵まで入ると同時に型紙部分が抜けて、靴下だけが残るようになっています。紐がついているので、足まで届かなくても靴下が履ける代物です。
痒いところに手が届く「孫の手」
最近はめっきり聞かなくなりましたが、孫の手はおばあちゃんが背中を掻いたり、肩を叩くのに使っていた道具のことです。40~50cmの長さで、片方には熊手のような形、片方にはゴルフボールサイズの柔らかい球がついています。
なぜこの孫の手を紹介するかと言えば、洋服を着るときに必ず困る「最後の直し」に役立つからです。
片手がうまく使えない方や、関節が硬くて自分の手では届かない方の場合、洋服を何とか着ることができても、首の襟や洋服が捲れている部分を直すことができません。このような時、孫の手があると首の襟を引っかけて直すことができます。
元々、痒いところに手が届くように設計されている孫の手は背中や肩に届く便利な道具になります。最近はリーチャーやマジックハンドが代用品になりますので、お好みで選んでみてください。
まとめ
今回は、生活の工夫に役立つ自助具について紹介しました。着替えを一人でやりたいと悩んでいたら、道具を使うことも検討してみてください。身近な道具にひと工夫をすることが、生活を広げるきっかけになるかもしれません。
地方の急性期病院で、地域の人たちを陰ながら支えています。真っ当に研究業績を積みながらも、メディアや地域活動を通して作業療法の魅力を伝えるマルチプレイヤー。