骨折リエゾンサービスって何それ美味しいの?

須藤(OT)

作業療法士のすまです。

骨粗鬆症は知名度の割に適切に治療されていない病気のひとつです。早期発見、早期治療を進めるには多職種で横断的に関わることが重要なのですが、やることはこれだけではないため、うまく進まないこともありますよね。

そんな問題を解決に導くのが、今回ご紹介する「骨折リエゾンサービス(FLS: Fracture Liaison Service)」です。実際に活動する作業療法士が、その活動についてお話しします。

骨折リエゾンサービスとは

2022年度診療報酬改定より「二次性骨折予防継続管理料」が新規に追加されたことをご存じでしょうか。この加算は「大腿骨近位骨折」を受傷されて入院された方を対象としており、急性期から回復期、そして退院後の外来通院まで一貫した骨折予防治療を継続することを支援するものです。

FLSはこの加算に関与する多職種で構成された任意のチームで、加算の対象となる大腿骨近位骨折患者のリストアップ、多職種による骨折予防・骨粗鬆症治療の指導などを行います。FLSの円滑な導入を目的として日本骨粗鬆症学会監修の「FLSクリニカルスタンダード1」が作成されており、全国各地でFLSが立ち上げられています。

医師だけではなかなかできないアレコレ

FLSの導入により期待される効果は「骨粗鬆症治療薬の開始および継続」です。骨粗鬆症治療薬を処方するのも説明するのも医師の業務ですが、医師がどれだけ孤軍奮闘しても限界があります。2020年受療行動調査(厚労省)2によると、外来患者の67%が診察時間10分未満と報告されており、日々の診療以外に骨粗鬆症の説明や指導を行う十分な時間が取れないことがわかります。

FLSは看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士、放射線技師、臨床検査技師、事務職などの多職種で構成され、骨粗鬆症を見落とさず、多角的に次の骨折を予防するための指導を行います。医師だけではできない栄養や運動の話、そして些細な不安を持つ患者さんを支えるきめ細やかな支援をそれぞれの職種がオーバーラップしながら行うことができるのです。

脆弱性骨折には順序がある

脆弱性骨折とは、骨粗鬆症を基盤とした骨密度の低下により、通常では骨折しない低い負荷で生じる骨折を呼びます。その代表例には大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折がありますが、その脆弱性骨折にも順序があります。大腿骨頚部骨折と脊椎圧迫骨折の好発年齢を見ていくと70歳代で急増し、80歳代以降も年齢とともに増加していきます3)

実はこの2つの骨折は脆弱性骨折の中でも後半に生じる骨折となります。それよりも若い時期に発生する脆弱骨折として、50歳代以降で好発する橈骨遠位端骨折、60歳代以降で好発する上腕骨近位部骨折があります。特に女性は40歳以降、女性ホルモンであるエストロゲンが減少するに伴い骨粗鬆症のリスクが急増するため、初めての骨折を起こす前になるべく早期に骨粗鬆症の治療を始めることが理想です。

もっと増やそう骨折リエゾンサービス

骨折を繰り返さないためには、骨粗鬆症を早期に発見して治療することです。今回は骨折リエゾンサービスができた経緯から、多職種で行うことの意義や対象とする脆弱性骨折についてお話ししました。FLSがさまざまな病院に広がることで、骨粗鬆症に対する医療従事者の認識が変化することを願います。骨粗鬆症の治療が当たり前に始められる世界に変わりますように。

参考資料

1)Liaison_Services_A4JP3版_v9 (josteo.com)

2)kakutei-gaikyo-all.pdf (mhlw.go.jp)

3)予防と治療ガイドライン2015年版

執筆者
須藤誠(作業療法士/デザイン部)

地方の急性期病院で、地域の人たちを陰ながら支えています。真っ当に研究業績を積みながらも、メディアや地域活動を通して作業療法の魅力を伝えるマルチプレイヤー。

Twitter:@sumako1004