『失敗できる環境』について、みんなの職種・職場はどうしている?

白石(Ns)

この間、「失敗できる環境って大事だよね」「でも医療の現場ではそう簡単に失敗できるものではない」という話を知人がしていて、私も個人的に思ったことはコラムを書いたんだけど、みんなの職種や職場ではどうかな?難しい問題だとは思うけど、みんなの話を聞いてみたいと思いまーす!
参加者

喜多(PT) クラーク(RT)
Fats(Ph) 坂場(OT)

喜多(PT)

“ネガティブな経験をする機会を提供する”ってすごく難しいよね。「故意にさせることは良くないのではないか?」「スタッフの傷つきの経験になっちゃうんじゃないの?」「成長の機会として認識できないのではないのか?」みたいな問題が立ちふさがるからさ。
そうそう!

白石(Ns)

喜多(PT)

この時に考えておくといいと思うのは、「自身にとってその経験がどうだったのか」かな。経験を振り返るなかで「この感じなら経験してもらう機会を作れるかもしれない」とか「こういうケアがセットになれば実現できる」みたいなものが見えてくるはずなんだよね。あまり言語化されてないところだから、経験を頼りにどうすればいいか考えていって、おいおいしっかりと言葉にできればええんじゃないかな。
なるほど。まさしく、自分が実際に経験したことから学びを得る、経験学習の話だ。単に経験させるだけじゃなくて、経験を次に活かすためのプロセスが重要ってことだよね。

白石(Ns)

喜多(PT)

そうそう。参考になると思う本は、『医療プロフェッショナルの経験学習』かな! これは各職種の経験年数に応じて、現場経験から学ぶことみたいなのをまとめてるのよ。例えば、保健師なら11年目以降では、患者家族からのネガティブな反応、患者の急変や死亡から学びがあるって報告してるんよね。そのスタッフの状況に合わせてどんな経験をさせるのかってのを示してて、分かりやすいと思うよ!
僕もこの話を聞いたときに、経験学習が頭をよぎった! 作業療法の中でも経験はとても重要な因子で、人間は経験をしていく中で作業を見出していくとされているんだよね。また、心理学などにおいても、コルブの経験学習モデルが重要視されている。

坂場(OT)

出典:経験学習モデルとは(https://www.revicglobal.com/column/0002/

坂場(OT)

これは具体的経験、内省、概念化と抽象化、実践という4つのステップを経ていくもので、経験が知識に変換されていくものだといわれているんだ。実は作業療法士の学校で心理学の授業を担当していたときに勉強し直したんだよね。
なるほど…

白石(Ns)

坂場(OT)

ここからは、失敗のできない医療現場で作業療法学生がどのように実習をしているかって話なんだけど…。私たち医療者はそう簡単に失敗できる環境ではないとはいえ、初めから上手にできる人もなかなかいないよね。ここで紹介したいことが現在、作業療法学生の実習形態である、臨床参加型実習(clinical clerkship:CCS)なんだ。
臨床参加型実習?

クラーク(RT)

坂場(OT)

最近はOTだけでなく、他の医療職でもこの形が主流になってきているらしいよ。CCSでは見学→模倣→実施という手順が踏まれる。つまり、対象者の方に実施する前に、できる人の見学をして、さらに模倣しながら指導者などの対象者以外の人に対して模倣をして、フィードバックをもらってから対象者さんに実施するという流れになっているんだ。ここの“模倣”の部分がいわゆる『失敗できる環境』なのではないかと思った。
ふむふむ。

クラーク(RT)

坂場(OT)

本や文章で名言されているわけではないけど、これらのことからミスをしながらも経験することによって学んでいくことが重要だと思っている。対象者さんに害が出ることは絶対に避けなければいけないけど、それ以外の場面では、たとえ有資格者でもさまざまなミスをして学んでいくのも一つの学習方法だと思うな。重要なのは、省察をして次につなげることだと思っていて。ミスをした人がいても、全体でフォローし合いながらレベルアップを図っていけるといいよね!

白石(Ns)

CCSのような見学→模倣→実施という手順は、看護学生の場合は病院実習の前に学校でやってくる看護技術演習(清拭や手・足浴、ベッドメイキングなど)に近いのかなと思った! 一定の技術基準をクリアしないと実習に行けないので、先生のお手本やビデオなどを見て、何度も練習するんだよね。
うんうん。

喜多(PT)

白石(Ns)

あとは、看護師だけではないかもしれないけど、学校の基礎教育で学んできたことと、臨床に出てからのギャップが問題になっていて。病院でも入職オリエンテーションはかなり頭を悩ませて試行錯誤しているみたい。その入職して間もない段階は特に、失敗ができる場面というよりは、失敗が起こりやすい場面なのかなと思った。そこで最近名前を聞くようになったタナーの『臨床判断モデル』とかは、バーサーカーさんのコルブの図にも近いかもしれない!このトレーニングに思考発話や臨床推論、臨床判断など、キーワードがいろいろ出てくるんだけど…私もすべて理解しているわけではないので、ちょっとビシッと解説するのは難しいなぁ。気になる人は調べてみてほしい(笑)

出典:臨床判断モデルで思考をつなぐ
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2020/PA03397_01

『背伸びするような経験』とか『難易度が少し高い経験』とか、そういう言われ方はよくするんだけど、「失敗から学ぶ」となると一気に言われることが少なくなるのが特徴的かなぁと思う。とは言いつつ、やっぱり看護はそういう内容の論文は多いから、ちゃんとやっているな〜って感じはするよね。

喜多(PT)

Fats(Ph)

すごいなぁ。みんなが提示してくれてるような議論とはちょっとずれるかもだけど。薬剤師の業務って頭の中で完結することが多くて、どうしてもわかりにくい&指導しにくい場面がある気がする。例えば、調剤した薬剤は問題なく妥当だと判断した理由とか。この患者さんへの介入の是非など。指導する場面では「どうしてこう判断したか?」の質問をぶつけて、回答に対してフィードバックすることばかりになりがち。患者さんのところへ行く前に「何がProblemになっていそうか予測して、どう介入するつもりか」を聞いて不足や抜けを指摘したりと前準備をしっかりやってから行くケースも多い。これって、本当の意味で失敗するチャンスはあまりないんだよね…。芽を摘まれてる感じで。
過去の失敗を徹底的に繰り返さないようにしてるって感じだね。

坂場(OT)

Fats(Ph)

うんうん。そもそも医療現場では、失敗は(極端に)許容されにくいし、多職種への指摘・提言がメイン業務になりやすい薬剤師では、「失敗させるためのお膳立て」が別途必要になると感じるんだよね。要は、失敗させることへのハードルが高い。一方で、がん専門薬剤師だけの集まりなどに参加すると、「自分が失敗した症例」を共有するという試みがあったりしてけっこう面白い。自分が介入したけど、あまり良い結果につながらなかった例を、他の専門薬剤師とああだこうだと討論することはかなり有意義だと評判なんだよね。
なるほどなぁ。

クラーク(RT)

Fats(Ph)

ただ、やっぱり専門薬剤師同士で、かつ共有して学びにつながるような失敗なので、致命的な失敗ではなく、フォローアップは確実に押さえたうえでの「もう一歩うまくいかなかった」って事例だからね。失敗から学ぶと言っても最低限、自分の尻を拭ける&拭ける範囲で収めるなどのスキルが必要なのかと思う。「どんどん失敗して学べ!」なんていうのは、新人向けの言葉のようで、意外とマンネリ化してきた中堅向けの言葉なのかなと思ったりするねぇ。
あ〜なんかすごいしっくりくる。たしかに中堅向けの言葉なのかもしれんね。マンネリ化している状態って失敗をしない状況にもあるだろうし。良くも悪くも落としどころがわかっちゃって及第点な関わりばっかりになっちゃったり、あるいはそもそも失敗の意味づけができたり、自分でリカバリーできるようになってきたりするのも、その頃かもしれない。常に起こり続ける状況の変化に対して、学び直していくことは必要だろうから、中堅向けで意識付けていいのかもしれないね。

喜多(PT)

クラーク(RT)

なるほど。僕もみんなのような体系的なことは言えないんだけど、放射線技師の「失敗」について背景を話すと、我々の失敗って「目に見えない犠牲」を伴うんだよね。つまり患者さんに無駄な放射線を浴びせてしまうってこと。これが怖くて、穿刺の失敗とかと違い、目に見えない分、感覚が麻痺して簡単に失敗し得ちゃうし、感覚がバグりやすい分野だと思っている。
ふむふむ。

坂場(OT)

クラーク(RT)

だからこそ、倫理観を取り戻すために教育的な介入をするんだけど、介入しすぎるのもなぁと思うところもある。たしかに失敗は糧になるのは経験上わかるんだけど、倫理観を維持させることと、失敗を経験させることの案配が難しいといつも思うね。できればバリエーションを含めたマニュアル化に合わせて、過去の失敗の共有をすることで疑似体験で収めたいというのが本音。
僕の感覚と近いかも!

Fats(Ph)

クラーク(RT)

そうそう。Fatsさんの話に似ていて、分野によっては『motality&mobility:M&M』という、合併症や死亡例についてのカンファレンスや学会sessionがあるね。このようにやむなく起きてしまった不幸な事例を、確実に次の経験に活かすというのは必要不可欠だなと感じる。一方でICLSなどの救命トレーニングのインストラクターをしてると、成人教育の話題に多く触れるね。失敗したときには「できた部分」と「改善する部分」を両方伝える、ヒントを与えて気づかせる、目標の達成をこまめに行い継続的に意欲を保つ、丁寧にフィードバックする…など。成熟した大人への教育は職場指導のあらゆるところに共通するだろうね。失敗したあとに、周りがどう振る舞うかでそれがマイナスになるかプラスになるか、はたまた掛け算になるか変わってくるんだろうなと思う。

白石(Ns)

やっぱり職種によって置かれている環境はかなり違うんだね。難しい問題だけど、それぞれの職種や職場の特性に応じて、失敗できる環境や失敗しても次の経験に活かしていける環境を整えていきたいと思ったよ。みんな、ありがとうー!

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