エビデンス。和訳では論拠、根拠、証拠とも訳されますが、訳がかえって誤解を招くためにカタカナ表記でエビデンスと用いられることもあります。
近年の医療の発展は科学的手法を用いた研究結果によりもたらされました。
Evidence Based Medicine(エビデンスに基づいた医療)の実践のためには、現場での医療者が適切にエビデンスを調べ、活用できなければなりません。
今回はエビデンスの検索に役立つ「シソーラス」について、研究活動に従事する現役作業療法士が解説します。
検索する用語はシソーラスを使おう
検索をしようと思っても、何を検索にかけたらいいか迷いますよね。
たとえば、作業療法について調べようと思っても、「OT」「作業療法」「作業療法士」といくつも候補があり、どれにしたらいいか迷うと思います。
そんな時はシソーラス(統制された用語)を確認することで解決できます。
シソーラス(英:thesaurus)とは、類語辞典のことで、単語の同義語、類義語、上下の階層関係を記載したものを指します。
医療用語におけるシソーラスは、国内の論文検索サイト「医中誌」にある機能で、シソーラス参照のタブをクリックすると使用できます。
この機能は無料デモ版で使用可能であるため、インターネットが使える環境であれば、誰でも使用できます。
参考 医中誌Webとは医学中央雑誌刊行会
実際に検索してみよう
シソーラス参照のシソーラスブラウザで調べたい用語を検索してみましょう。
たとえば、「作業療法」と検索すると、「作業療法(シソーラス用語)」「病院作業療法科(シソーラス用語)」「作業療法士(シソーラス用語)」「園芸療法(シソーラス用語)」「作業療法士学生(検索支援用語)」と出てきます。
つまり、(シソーラス用語)と表記されているものは学術的に使用される頻度が多く、統制用語として認められていると解釈できます。
次に「作業療法」のところをクリックし、「キーワードの詳細情報を見る」を選択してください(図1参照)。
図1:医中誌のシソーラス用語検索結果画面
すると、作業療法という用語がどのカテゴリーに入るか、同義語には何があるのかが表示されます。
この方法を用いることで、自分が知っている用語が「統制された用語」か、それとも「マイナーに使われる用語」かを知ることができます。
正しいキーワードで検索できるようにすることはエビデンスの検索にとって必要不可欠です。
上位語・下位語を使って検索幅を広げる
検索幅を広げる時は、その用語のカテゴリーの上下を知ることが役に立ちます。
先ほどの「作業療法」の詳細情報の画面で「上位語・下位語」のタブをクリックしてください(図2参照)。
図2:上位語・下位語の確認
すると、「作業療法」がどのカテゴリーに分類されているか、そして上位階層が何かがわかります。
作業療法は「治療→患者管理→治療の継続→アフターケア→リハビリテーション→作業療法」のカテゴリ、「治療→リハビリテーション→作業療法」のカテゴリ、「保健医療業務→保健医療関連業務→作業療法」のカテゴリの3つに分かれています。
つまり、作業療法より一つ上の階層で検索しようと思ったら「リハビリテーション」で検索するのが適切になります。
自分が調べたいことの範囲やカテゴリを知りたいときは、上位語・下位語を調べてみましょう。
英語検索に役立つ?MeSH用語
海外の論文を調べてみようとしたことはありますか?
日本語ですら統制語を調べるのに苦労するので、英語なんてもってのほか…とお思いのあなたに朗報です。
実は医中誌のシソーラス用語には、海外の論文で扱われる統制用語についても表記されています。
その名も【MeSH用語】です。
作業療法のMeSH用語は「Occupational Therapy」となり、これをクリックすると海外論文検索サイトの「Pubmed」で「Occupational Therapy(MH)」を検索することができます(図3参照)。
図3:MeSH用語の確認
この(MH)がMeSH用語であることを示していますので、何か別の用語を検索する際にも「〇〇〇(MH)」と検索することで、MeSH用語として検索することができます。
(MH)をつけない場合はALL(全てを検索)として扱われます。
エビデンスレベルの高い研究手法であるシステマティックレビューやメタアナリシスには論文収集の際の検索式が出ていますので、それらの論文を読み解く時にも役立ちます。
まとめ
EBMは適切なエビデンスの検索、臨床家の経験、患者の価値観、患者自身が置かれている状況をそれぞれ吟味し、適切な手法を提案していくプロセスを指します。
これは医師だけでも、研究者だけのものでもありません。
現場で働き、患者さんと向き合う医療職のすべてに必要なプロセスです。
正しい検索の仕方、明日から試してみては?
地方の急性期病院で、地域の人たちを陰ながら支えています。真っ当に研究業績を積みながらも、メディアや地域活動を通して作業療法の魅力を伝えるマルチプレイヤー。