多職種で考える!学生指導の立場でみるケーススタディについて

医療者であれば一度は経験する学生指導。しかし、「ケーススタディを行ってください」と学校側から言われたとき、具体的に何をどうすればよいか分からない人もいるのではないでしょうか。今回、ケーススタディで学生指導の経験があるメディッコメンバーで話し合ってみました。

参加者

 坂場(OT)
精神科病棟でケースバイザーを経験。どのような実習が学生・臨床家の勉強に良いのか模索中。

 Fats(Ph)
病院薬剤師7年目。臨床の面白さや勉強の必要性を感じてもらい、医療という領域の広さと深さを体感してもらえる実習とは何かを考えている。

 大平(PT)
理学療法士5年目。急性期と回復期病棟で学生指導を経験。何度やっても学生指導は難しいと感じるが、やりがいが大きいと思っている。

ケースバイザーとは
上司にスーパーバイザーとして補佐をしてもらいながら、指導者として経験が浅いセラピストが実習生の指導を行う。

ケーススタディにおいて知識を広げるのは難しい?

Fats(Ph)

ケーススタディは、担当症例についての知識を深めることができるので有意義だと思います。その反面、体系的な知識や症例を含めた全般的な知識の取得に苦労する実習生が多い印象があります。みなさんは、実習生を指導する際にどのような工夫をしていますか?

僕は全般的な知識の習得に繋がることを提案するようにしています。たとえば、統合失調症の陽性症状が出ているケースについて話し合う場合、実習生に「陰性症状はどんなものがあるのか?」と問題提起します。そこから、どのような分類なのか? どうして症状が出てしまうか? 作業療法はどこに働きかければ良いか? など深めていきます。そうすることで全体的な知識を学んでもらい、陽性症状のみに焦点を絞らず、全般的な学習の必要性がより見えてくるように働きかけています。

坂場(OT)

大平(PT)

僕は坂場さんの行う工夫に加えて、学生が『全体的な知識を学ぶきっかけになりそうな患者さんの見学』に付いてもらうように工夫しています。その後のフィードバックで、担当症例と比較して話をすることで、全体的な知識の学習をしてもらっています。

Fats(Ph)

お二人とも担当症例をきっかけに多角的な視点を持ってもらえるように工夫しているのですね。僕も実習生には薬についての広い知識を持って欲しいと思っているので、入院患者さんについては主疾患以外にも、持参薬から既往歴についても深く調べてもらい視野が狭くならないようにしています。

 学生指導において学生のために大切にしていること

大平(PT)

お二人は、ケーススタディでの指導において他に気を付けていることはありますか?僕は学生が学びたいことを最優先にすることで、自主性を高めてもらえるようにしています。あとは臨床でしか学べないことをしっかり伝えるようにしています。

僕はまず本人が学校で学んできたことから感じている疑問や興味を聞き取るようにしています。それは実習を行うにあたって実習生の考えを把握することが何より大事だと思っているからです。

坂場(OT)

Fats(Ph)

僕が実習生の時に出会った指導者は気付きを与えてくれる方で、新しい気付きがある度に実習が楽しくなった気持ちを今でも覚えています。その気持ちを忘れず、指導者として大学の座学で勉強した内容が臨床にどうつながるかを、実習生に気付いてもらい実習を楽しんでもらえるように意識しています。

大平(PT)

お二人とも、実習生の成長を最優先に考えて、その学生に合わせた指導や気付きを与えるようにされてるんですね。

実習生に「気付き」を与えるためのアクションは何があるのか?

大平(PT)

もう一つお二人に聞きたいです。学生さんに気付きを与えるために、何を気を付けていますか? 僕は理学療法士が得意な身体機能へのアプローチだけではなく、多職種連携における理学療法士の関わり方に対する気付きも与えるようにしています。

実習生がやりたいことを聞いたうえで、患者さんに悪影響がなければ実践してもらうようにしています。その後の振り返りを丁寧に行うことで、実践のための準備がどこまで必要かを気づいてもらうようにしています。

坂場(OT)

Fats(Ph)

薬剤師はただ処方内容に指摘するだけの仕事だと思わないようにと指導しています。そのため、自分ならどうするか、そのためにはどんな知識が必要なのかを気付いてもらえるようにしています。

大平(PT)

やはり職種が変われば、アクションや気付いて欲しい気付きも違うので参考になり、多職種連携も深まりそうです。

実習生が担当する患者さんはどうやって選んでいるのか?

では、ケーススタディで担当してもらう患者さんは、お二人はどう選んでいますか?僕の場合、急性期で精神疾患の陽性症状が顕著に出ている人は、実習生とトラブルになる可能性が高いため避けています。

坂場(OT)

Fats(Ph)

当院はがん患者が多く入院されているため、あまり気持ちが落ち込んでいる場合は担当してもらわないようにしています。なので、ある程度病気に対して受容ができていて、かつ薬剤に関わる問題が多い患者さんを選ぶようにしています。現在の病院実習は2.5ヶ月と長期間行うので、長い経過を追える患者さんがより好ましいですね。

大平(PT)

当院は脳卒中病棟なので、障害受容がある程度できている比較的軽度片麻痺の患者さんを担当してもらいます。そのような患者さんでは、装具作成や歩行獲得が見込め、家庭訪問などの過程も学ぶことができるからです。

なるほど。お二人とも障害受容がある程度できている患者さんを選んでいるんですね。

坂場(OT)

ケーススタディを行った実習生で印象に残っている学生は?

みなさんは今まで実習生を指導してきたなかで、印象に残っている学生はいますか?僕の場合は受け持った方との思い出をまとめて、部屋に飾れるようにしてくれた学生さんを思い出します。入院期間が長い患者さんだったので学生さんとの思い出が作れて患者さんにとっても良い刺激を与えてくれたのではないかと感じます。

坂場(OT)

Fats(Ph)

僕が一番印象に残っているのは、非常に引っ込み思案で何をしてもらっても萎縮してしまう学生です。辛抱強く最後まで指導していると、2ヶ月後には国際学会の最新レポートの内容を理解できるまでに成長してくれました。最後は僕に感謝のプレゼントをしてくれて「頑張ってよかったなぁ」と強く感じたのを覚えています。

大平(PT)

僕が一番印象に残っているのは、真面目ですが成績が伸び悩んでいる学生です。勉強方法を二人で模索してやりたいこと、やってみたいこと、分からないことを話し合ううちにどんどん成長していき、実習の最後には質問も職員と変わらないレベルまで出来るようになりました。その子は最後、僕に「実習が楽しかった」と言ってくれて、最後まで一緒にやってきてよかったなと思っています。

お二人は実習でより変化が見られた学生さんが印象に残っているようですね! 学生さんが出来ないことがあったり、わからないことがあるのは当然なので、僕たち臨床家が「良い実習」になるために後押しできるといいですね。

坂場(OT)

まとめ
今回は学生指導におけるケーススタディのコツや患者選択について、多職種で話し合ってみました。職種間での違いはやはりありますが、共通点もあり、参考になることが多かったようです。ケーススタディを依頼されたときは、是非ともこの三人の座談会を思い出してくださいね。