メディッコ学術部が、リハケア学会2019で発表してきました! その夜に開催した『メディッコプチ』(気軽に語り合うことを目的としたイベント)には、多くの学会参加者が来てくださいました。今回は、イベントレポ第2弾として、イベント参加者の研究や臨床に関する悩みについて話し合った内容を一部お届けします。
参加者
増永さん(PT)
理学療法士。学会発表は5年ぶり。障害予防の方法について模索中。
かいまるさん(OT)
作業療法士。多職種が集まる学会は初めて。老健、地域でもがき中。
喜多(PT)
理学療法士。今年は論文が2つ掲載されて喜んでいる。
須藤(OT)
作業療法士。学会発表はできるが、論文投稿へのスムーズな流れができず絶賛悩み中。
かなこ(Ns)
看護師。学会初心者。まだまだちんぷんかんぷんなことばかり。
坂場(OT)
作業療法士。現在は博士課程で猛勉強中。
研究テーマをどう決めていけばいいか?
僕は今後も研究を続けたいと思うのですが、具体的にやりたい内容がまだはっきりしていません。
かいまるさん(OT)
喜多(PT)
なるほど。現在、博士課程の坂場さんはどうされていますか?
僕は、まず臨床の中で疑問に思ったことから「どういう研究にしようか」と考えています。その中で、先行研究の検索や教授の領域を検討して、絞っていきます。患者さんを対象にした研究となると、効果の範囲全てを網羅しておかなければならないので、どこを研究の限界としてラインを引くかというのが難しいところですね。
坂場(OT)
患者さんはいろんなサービスを使っていることが多く、サービス担当者が一同に会える機会がないために、全てを網羅するのは難しいと感じますね。なかなかいい研究デザインを考えられていなくて、事例報告をしている状態ですね。
かいまるさん(OT)
かなこ(Ns)
なるほど。手法やデザインにも迷っているんですね。
須藤(OT)
事例報告も立派な研究の一つで、仮説を生み出すという点ですごく大事なんですよ。研究デザインを考えるうえで大事なのは、自分たちの職場で何ができるのか、どういうことが問題になっているのかといった、職場の分析をすることだと思います。
喜多(PT)
現場でやってるからこそ見れるデータや、事例は必ずありますからね。
須藤(OT)
そうそう。だから問題提起をするという視点で、事例報告をしっかりやることは良いと思います。量的研究や介入研究をやりたいという気持ちは、誰かがやってくれると信じて、まずは自分の環境でできることを進めていくのが大事かなと思います。
なるほど。自分の現場でできることからもう一度考えてみます。
かいまるさん(OT)
喜多(PT)
僕は臨床11年目ですけど、事例研究や質的研究を中心にしようと思っているんです。「現場で働いているからこそ見える」生々しいものをもっと出していくことに、現場で働いている人が出す価値があると思っています。
PTさんは量的研究で、エビデンスレベルを求めていくイメージでしたが、違うんですね。
かいまるさん(OT)
喜多(PT)
そういう流れは大きいですよね。でもそれだけでなく、PTが関わって「ちょっと前向きになった」とか「家族の気持ちに変化があった」というところも、僕は大事だと思ってるのですよね。
須藤(OT)
久しぶりに真面目なこと言ってるね。
喜多(PT)
でしょ(笑)。患者さんの細かい心境の変化を捉えることができないと、患者さんが「生きててよかったな」というところにたどり着かないと思うのです。その問題提起のためにも、僕は事例研究や質的研究を進めたいと思います。
精神疾患を持つ患者さんと、どう関わっていけばいい?
僕は臨床での悩みなんですが、回復期に入院中で、身体疾患と精神疾患の両方を抱える患者さんがいて、リハビリ拒否などでうまく進められないのです。PTはそういう患者さんには嫌われてしまうことが多いと感じます。関わり方にコツはあるんでしょうか?
増永さん(PT)
かなこ(Ns)
どうなんでしょう…。精神科に勤めている坂場さんは、どうやって対応しているんですか?
OTは精神疾患に対して、障害ではなく特性として捉える方針を取ります。例えば、「幻聴が聞こえる」ということを、特性として捉えるんです。その特性を捉えながら「じゃあ、この人はどうやったら幸せなんだろう?」というような考え方をしていくんですよ。
坂場(OT)
かなこ(Ns)
じゃあその幻聴を特性と捉えるとして、どうやって介入していくんですか?
例えば、「幻聴に名前をつけよう」という手法をとります。患者さんの幻聴が「死ね」と聞こえるものの場合、「疲れてくると、死ねと言ってくる幻聴」という名前をつけるのです。そうして「死ね」と言われはじめたら、「あ、僕、今疲れているな」と患者さんが捉えられるようにしていくんです。
坂場(OT)
かなこ(Ns)
なるほどー。
そうすれば、患者さんが「幻聴が聞こえる」と言いだしたときに、「今疲れている状態にあるから、ちょっと休んだほうがいいんじゃない?」とこちらから促してあげることもできます。そして、そうならず生活に支障がでないように、どうやって対処していくかと考えていくんです。
坂場(OT)
かなこ(Ns)
OTとPTでは、精神疾患の対応に違いがあるのですか?
多分医療のリハでは、そういう人に対して、ひとまず運動処方が出ます。その枠組みの中で、悪い言い方ですけどリハビリを「押し付けないといけない」わけです。そうすると、全部受け入れるよと言ってくれるOTと、運動をしましょうとだけ言ってくるPTでは、患者さんの受け入れ方が違うのだと思います。
坂場(OT)
かなこ(Ns)
うんうん。
OTがなぜ受け入れられるかというと、「特徴として捉えようね」というところに患者さんが納得しているからだと思います。なので、PTの運動に対しても、納得してもらえるように落とし込んでいく必要があると思います。
坂場(OT)
喜多(PT)
精神疾患以外でも同じようなことが言えそうですね。
そうですね。認知機能が低下している患者さんでも難しいことがありますよね。「歩こうね」というのではダメでも、「コンビニにいって買い物に行こうね」と言えば歩いてくれる人も事例としてあります。運動ひとつにしても伝えかた次第なのかなと感じることもありますね。
坂場(OT)
なるほど。今回の例では、PTとして身体機能を向上していかなければいけないという役割と、精神面を考慮してその人の話を聞いてあげるという、時間と質のバランスに悩んでいるんです。精神的フォローや、生活に落とし込むためのフォローはOTさんの役割として見てもらっているのですが、じゃあPTはどのような距離感で接すればいいのかが難しいなと感じます。
増永さん(PT)
僕は認知症の患者さんと関わることが多いです。増永さんと同じようなこともあるのですが「そうですね」と話しながら、適度な距離を保って接するようにしています。感覚的なものになりますが、こちらが焦ると患者さんにも伝わりますよね。患者さんに焦りが伝播することもあるので、そう見せないように意識しています。
かいまるさん(OT)
セラピストとして、患者さんの「今後の人生」を考えたい
須藤(OT)
病院では、患者さんとの関わりが入院中だけなので、期間限定で僕たちができる役割を考えますよね。でも、患者さんの人生はその先も続きます。僕は、人生会議をして、今後の人生をどうしていくかということを考えて介入していくことが大事だと思います。
それを患者さんと話すってことですか?
増永さん(PT)
須藤(OT)
そうです。「まだそんな時期じゃない」と受け入れられない人もいますが、きちんと考えてくれる人もいます。まずは僕たちが、患者さんが入院した時点で、人生会議をする機会を提供するのも大事かなと思っています。
なるほど。
増永さん(PT)
須藤(OT)
やっぱりその病院の中でできることは限られるんですよ。その後の人生をイメージできても、全部をフォローするのは現実的に難しいです。なので、そこは次の領域(転院先や在宅の介護者)にバトンを渡すように意識していくべきだと思います。
たしかに、次の領域にバトンを渡すのは大事ですね。僕は生活期を経験してから回復期に戻ったので、「患者さんの今後の人生」という視点でイメージできるようになりましたが、そのイメージを次の領域に共有するまではできていませんね。
増永さん(PT)
須藤(OT)
自分しか見れていないビジョンを、他のスタッフや領域の人に共有するのはすごく大事ですよね。そういう意味でも多職種連携は大事だと思います。
喜多(PT)
多職種連携をちゃんとできると、自職種の限界を超えると聞いたことがあります。例えば、OTの持っているエビデンスはここまで、というのがあるんですけど、看護師や薬剤師などいろんな職種と協力することで、そのエビデンスを超えられるらしいのです。
須藤(OT)
その時期で、自施設でできることって限られているけど、連携すればそれ以上のことができるというのはたしかにあると思いますね。
まとめ
今回は、メディッコプチに参加してくださった方の悩みについて話し合いました。それぞれに研究や臨床について悩みを持っていましたが、話し合いの中で解決のヒントを得られたのではないでしょうか。それぞれの現場のリアルを聞くことができるのは勉強になりますね。今後もメディッコでは様々なイベントも企画していきます。お楽しみに!