地域包括ケアシステムって何なのさ

「2025年を目途に地域包括ケアシステムを構築しよう」皆さんもどこかで聞いたことのあるフレーズだと思います。でも実際は、地域包括ケアシステムについてよくわからないという人が大半なのではないでしょうか。地域包括ケアシステムまであと5年を切った今、皆さんで今一度考えていきたいです。今回は地域で働く作業療法士が、地域包括ケアシステムの概要からお伝えします。

 

2025年に何があるの?

 2025年は、人口統計の分布が大きく変化する年であると言われています。日本における出生数が最も多い「第一次ベビーブーム」と呼ばれる団塊の世代が75歳を迎えることで、65歳以上の高齢者人口は全体の30%を超えることが予想されています。つまり、2025年以降は現在よりも速いスピードで医療・介護の需要が増加していくことから、2025年までに準備を呼びかけているわけです。

また、高齢者割合の増加に注目が集まっていますが、実は全体の人口は減少し、生産年齢人口(働いて税金を納める側の人口)が少なくなっていくことが予想されています。施設や病院の数が今のままでは、職員数を確保できない事態が否応なしに迫ってくるわけです。

 

地域の範囲ってどれくらい?

 地域包括ケアシステムの主導は市町村で、その市町村の中でも圏域(中学校の学区単位)ごとに分けて対応しています。例えば同じ市内でも、人口が密集する中心地域と過疎化が進む周辺地域では問題が違うため、必要な資源が異なることがあるからです。地域包括ケアシステムは、圏域レベルの問題に応じたテーラーメイドなシステムづくりが必要になります。

地域包括ケアシステムにおける資源は、何も医療機関や介護事業所だけではありません。みなさんが暮らす、地域にある学校、スーパー、コンビニエンスストアも含まれ、高齢者だけではなく、みなさん自身が働きやすくするための資源も含まれています。過疎化が進んだ地域は、高齢者が増えているだけではなく、若い世代の働く場所がないことも大きな課題となっています。

 

まとめ:地域包括ケアシステムって結局は何なのさ?

 結論から言うと、まちづくりです。皆さんが勤める病院や施設、企業もすべて地域の一部ですから、それぞれが地域の中で大切な資源の一つになります。例えば、その圏域に訪問リハビリがあることで、その地域の人は訪問リハビリを受けられます。これは当たり前のことに感じますが、過疎化が進む地域ではこうした資源が不足し、サービスが受けられないことを前提に生活していかなければいけません。

地域包括ケアシステムに直接関わっている人は少ないように感じますが、「あなたの仕事がその地域でどんな役割を担っているのか」を少し考えてみてください。その意識ひとつが、あなたの地域の地域包括ケアシステムの支えになるはずです。

 

執筆者
須藤誠(作業療法士/学術部)

地方の急性期病院で、地域の人たちを陰ながら支えています。真っ当に研究業績を積みながらも、メディアや地域活動を通して作業療法の魅力を伝えるマルチプレイヤー。