早期からのリハビリが必要な理由


疾患の新規発症や手術・急性増悪に対して、できるだけ早期に身体機能の維持、改善、再獲得を図るリハビリのことを「早期リハビリテーション(以下、早期リハビリ)」1)と呼びます。

早ければ入院当日からリハビリが開始されることもあります。

患者さんによっては、痛みに耐えながらリハビリを頑張っている方もいるかもしれません。

そんな光景を見て「こんなに早くからリハビリして、大丈夫なの!?」と感じる他職種の方もいるかと思います。

今回はそのような方に対して、早期リハビリが必要な理由を体を動かすために必要な関節や筋肉などに関する点から解説していこうと思います。

 

早期リハビリが必要な理由は?

①関節が固まってしまうから


治療や手術の影響で動かず、寝たきりの期間が長引くにつれて、筋肉や関節周囲の組織が萎縮し、関節拘縮となり可動域制限が出てしまいます

一度関節拘縮がおこってしまうと、可動域を改善するためにかなりの時間がかかってしまいます。そのため、関節拘縮が起こる前にできるだけ早期から可動域訓練を開始する必要があります。

 

②筋力が弱ってしまうから


人間はベッドで寝たままでいると、1日あたり1〜3%、1週間に10〜15%の筋力低下がおこるといわれています。

1週間の寝たきりで起こった筋力低下を元に戻すためには、約1ヶ月の筋力トレーニングが必要とされており、寝たきりが長引くほど、その後のリハビリ期間も長引いてしまいます。

また、姿勢や歩行に必要な筋(抗重力筋)で、真っ先に筋力低下が起こりやすいため、起居動作やADL動作の能力低下にも影響します。

リハビリではできるだけ早期から筋力トレーニングを開始して、筋力低下を最小限にすることを一つの目標にしています。

 

③骨萎縮が起きやすくなるから


人間の骨は、常に骨吸収と骨形成をバランスよく繰り返して骨密度を保っており、骨形成は運動による荷重によっても促進されます。

動かず寝たきりでいると、このバランスが崩れてしまい、骨吸収の比率が高くなるため、骨萎縮が生じます

骨萎縮が生じると服薬コントロールが必要になったり、転倒しないように注意が必要になったりとその後の生活に影響が出ます。

そのため、できるだけ早期から起き上がりや立ち上がりのリハビリを行なって荷重をかけていく必要があります。

 

早期リハビリは多職種連携が大切


早期リハビリは上記のような身体機能の低下を防ぐために、リスク管理をしながら早期離床を促していきます。

しかし離床を促すためには、リハビリを行うだけでは不十分です。

日中の院内生活においても離床してもらうために、看護師さんや介護士さんに声かけをしてもらうなどの多職種連携が必要不可欠になります。

患者さんに出来るだけ早く元の生活に戻ってもらうためにも、より密な連携を取っていってもらいたいと思います。

 

参考文献
1) 集中治療における早期リハビリテーション〜根拠に基づくエキスパートコンセンサス〜 日本集中治療医学会
https://www.jsicm.org/pdf/soki_riha_1707.pdf

 

執筆者
たみお(理学療法士/リハ栄養部)

慢性期病院で勤務し、患者さんの生活の質を向上させるべく奮闘中。講演やボランティアなどの地域に根ざした活動を積極的に行っています。メディッコではギター侍担当。