RSTって何? 活動を通した多職種連携とは!

今回はゲストをお呼びした外部座談会です。テーマは、RST(呼吸ケアサポートチーム:respiratry support team、以下RST)。

「RSTって何をしているんだろう?」「多職種連携でどのようなことに気を付けているんだろう?」などについて、RST活動経験のある、理学療法士のえるにーにょさんにお話を伺いました!

参加者

 タサモ(ME)
臨床工学技士13年目。100床の病院にて勤務。慢性期呼吸や血液浄化に携わっている。

 イサミ(Ph)
薬剤師6年目。総合病院で腫瘍センターに勤務。RSTに関しては知らないことの方が多い。

 えるにーにょ(PT)
理学療法士10年目。500床以上の病院で主に集中治療領域と呼吸器内科領域に携わる。RSTには5年在籍。

RST(呼吸ケアサポートチーム)の活動内容

タサモ(ME)

えるにーにょさん、本日はよろしくお願いします! まず、RSTでの普段の活動を教えてもらえますか?

僕の病院では、毎週1回のラウンドと年間を通した看護師対象の勉強会などを行っています。

えるにーにょ(PT)

タサモ(ME)

ちなみに、RSTには医師、看護師、理学療法士以外にどんな職種が在籍しているのですか?

現在のメンバーは呼吸器内科医、集中ケア認定看護師、皮膚排泄ケア認定看護師、理学療法士、臨床工学技士、薬剤師です。当院のRSTの役割としては、以下のようなものです。

えるにーにょ(PT)

  • 医師:治療状況の把握と意思決定
  • 看護師:経過の把握と病棟への指導、フォロー
  • 理学療法士:経時的変化の把握、フィジカルアセスメントでの評価・進言
  • 薬剤師:患者急変時・診療科変更時などの薬剤変更対応、配合変化の確認、病棟薬剤師が取りこぼした情報を診療科医師に伝達するなど、横断的な薬学的知識を活用したフォロー
  • 臨床工学技士:機械の安全保守、他職種の困りごとを臨床工学技士の視点からフォロー

通常、人工呼吸器は慣れている病棟で使用することが推奨されています。しかし、昨今の医療事情では、一般病棟で管理せざるを得ないケースもありますので、その際にRSTがサポートするという側面が大きいです。

えるにーにょ(PT)

なるほど。看護師対象の勉強会はどのようなものを行なっているのですか?

イサミ(Ph)

RST主催の勉強会には2種類あります。①新規デバイスの周知のための勉強会と、②呼吸の基礎を学習してもらうための勉強会です。②の勉強会は、RSTメンバーがそれぞれの分野別に内容を選定し、1ヵ月に2回、年間を通して開催しています。

えるにーにょ(PT)

タサモ(ME)

結構多い! 万全の体制ですね。

ちなみに、呼吸療法認定を取りたいスタッフのサポートも行っています。また、勉強会を開催するメリットに、RSTメンバーの「顔」を病棟スタッフが覚えてくれるという点があります。これによって、ちょっとした呼吸異常が発見されたときにRSTを呼んでくれるので、急変まで至らずに済んだという事案も多いです。

えるにーにょ(PT)

タサモ(ME)

勉強会の活動がきちんと日常診療に活かせているのはすごいですね。

RST内での理学療法士の具体的な役割

タサモ(ME)

理学療法士さんは、RST内でどのようなことをしているのですか?

週1回のラウンドでは、患者さんの呼吸状態の変化や治療方針の変遷を担当の理学療法士から共有してもらい、その情報を医師に提供し、人工呼吸器設定変更などの参考にしてもらいます。また、RSTの理学療法士は人工呼吸器の離脱時のフィジカルアセスメントも得意分野だと思います。

えるにーにょ(PT)

タサモ(ME)

私も臨床工学技士として人工呼吸器に携わっていますが、RSTの理学療法士はウィーニングにも携わっているんですか?

そうですね。ウィーニングの持続時間はフィジカル面も見ながら決定するので、その点も評価、進言しています。当院では、人工呼吸器(IPPV・NPPVなど)やNHF(ネーザルハイフロー)の導入患者を、完全離脱、転院などのさまざまな場面で診ています。

えるにーにょ(PT)

RST内での薬剤師の具体的な役割

薬剤師は、RSTではどのような場面で活躍していますか?

イサミ(Ph)

当院でも、実は薬剤師が介入するようになってからまだ2年なんです。具体的な役割としては、患者さんが急変時の大幅な薬剤変更時、薬剤選択の助言・飲み合わせ・配合変化などの漏れを防ぐことが挙げられます。また、感染が長引いている患者さんなどについて、ICTなどの他チームの薬剤師と共有した情報を伝えてくれるなど、非常に助かる面もあります。

えるにーにょ(PT)

呼吸のみにフォーカスしている訳ではなく、人工呼吸器を使用中の患者さんに対して、包括的な関わりをしているということですね。

イサミ(Ph)

タサモ(ME)

たしかに、薬剤師さんがRSTに入っているイメージは、正直あまりなかったです。患者さんの情報を共有しつつ、スムーズに治療に当たれるのはとてもよいですね。

そうですね。とくにクリティカルな領域では、薬剤の変更が頻回に起こります。薬剤師さんの強みとしては、ICT・NST・DSTなど横断的にチームに加入しているので、対象患者の感染・栄養・認知症に関する薬剤情報を事前に入手できることでしょうか。その情報はとても重要なんです。

えるにーにょ(PT)

薬剤師は疾患横断的な役割が求められるので、ジェネラルな能力が必要ということですね!

イサミ(Ph)

まさしく!

えるにーにょ(PT)

RST内での臨床工学技士の具体的な役割

タサモ(ME)

臨床工学技士にはどのような役割がありますか?

臨床工学技士さんとは駆け引きが多いかもしれません。ウィーニングでIPPV→NPPV→NHF→NPPVと切り替えて様子をみていたときには「回路代どうすんねん?」と怒られたりします(笑)。それでも、挿管中の吸入薬を使用する際のデバイスで問題がある薬剤と、そうでない薬剤をすぐに業者に問い合わせて調べてくれることもあって、非常に助かってます。

えるにーにょ(PT)

タサモ(ME)

たしかに、回路代等のコストは気にしちゃいますね(笑)。皆さんがお互いに個々の職種のポテンシャルを引き出して、切磋琢磨しながらいい治療を目指すところに、RSTの良さがあるのかもしれないですね。呼吸ケアだけではなく、他の領域の勉強にもなりそうです。

臨床工学技士さんは、やっぱり機械のスペシャリストなんで、機械主体で話をしてくれる唯一の職ですよね。それって呼吸管理を安全に行うには必要不可欠です。医師や看護師、理学療法士は「これやったらええやん」と経験に頼った感覚的な介入をしがちですから(笑)。

えるにーにょ(PT)

タサモ(ME)

そうですね、機械については頼りにしてもらえると嬉しいです!

他職種との連携で意識していること

タサモ(ME)

実際のRSTの活動で、他職種と連携するうえで、えるにーにょさんが意識していることはありますか?

意識することは、なるべく共通言語で話すことと、わからない用語があればすぐに質問することです。 とくに薬剤師さんの話は、理学療法士には難しいことも多いです。逆もしかりなので、お互いに質問してカンファレンスが進まないと、時間がもったいないですよね。

えるにーにょ(PT)

専門用語は普段使い慣れていて、自分では専門用語と思っていない場合もあるから気を付けないといけないですよね。

イサミ(Ph)

ちなみに今年のホワイトデーは、薬剤師さんに理学療法のやさしめのハンドブックをプレゼントしました(笑)。

えるにーにょ(PT)

ハンドブック!? 仲の良さが伺えますね。あと、週に1回のラウンド以外に患者さんを評価しに行ったり、RSTの活動をすることはありますか?

イサミ(Ph)

そうですね、週に1回のラウンドだけでは評価が難しいこともあります。基本的にRSTメンバーはみんなPHSを持っていますので、呼吸状態が悪化したなどでコールが来たら駆けつける感じです。そのため、RSTメンバーの休みが重ならないように調整をしています。あとは、皮膚排泄ケア認定看護の方がMDRPU(*)の予防と対応で随時入っていますね。

えるにーにょ(PT)

タサモ(ME)

MDRPUの対策もされるんですね。たしかに、マスクにしても挿管にしても創傷が起きやすいですよね。

皮膚トラブルは本当に多いですね。

えるにーにょ(PT)

RSTからのお願い、活動が広がるためには

RSTに関わっていないスタッフでも、人工呼吸器の患者さんに接する機会はあるかと思います。普段から気にしてほしいポイントなどを教えてください。

イサミ(Ph)

加温・加湿は絶対的に守ってほしいですね。 皆さんが思っている以上に、乾燥した空気は気道粘膜悪影響を与えるので。あと、とくに看護師さんにお願いなのですが、カルテには呼吸数をしっかり載せてもらえると嬉しいです。

えるにーにょ(PT)

タサモ(ME)

なるほど、カルテの情報は職種によって必要な情報が違うこともありますね。えるにーにょさんの病院のように、他職種が協力し合えるようなRSTチームを作るためには、また活動が広まるにはどうしたらいいと思いますか?

まずは呼吸器が好きなスタッフ同士が職種関係なく集まって、その人たちが病棟や各部署を巻き込めたらいいかなと思います。あと、医師から立ち上げの進言を待っている施設が多いようですが、当院はコメディカルからRSTが立ち上がった経緯があります。

えるにーにょ(PT)

そうなんですか! それは心強い前例かもしれません。この座談会を読んで、RSTに興味を持つ方もいると思うので、これを機にもっと広まると良いですね! 最後に、RSTでのやりがいを教えてください。

イサミ(Ph)

RSTのやりがいは、たくさんありますけど…

えるにーにょ(PT)

  • 離脱の進まない患者の離脱へのサポートがチームとして行えた
  • 呼吸器トラブルがなく、離脱までサポートできた
  • 教育してきた内容が汎化されるようになってきた

こういうときに、やりがいを感じますね。なにはともあれ、個人的には、人工呼吸器に触れる時間が多いのが楽しいです(笑)。

えるにーにょ(PT)

タサモ(ME)

えるにーにょさんは、呼吸器が本当に好きなんですね! 当院はRST活動がないので、今回の話はかなり勉強になりました。ありがとうございました。

ありがとうございました!

えるにーにょ(PT)

 

まとめ
RSTの活動にはさまざまな職種がそれぞれの役割を持って関わっていることがわかりました。呼吸管理については、とても心強い存在ですね。もともと知っていた方もそうでない方も、ご自身の病院での取り組みにぜひ活かしてほしいです! えるにーにょさん、とても勉強になる座談会をありがとうございました!!